◆月ヶ瀬奈良晒保存会

1月20日 かねてより見てみたかった奈良晒の現場に行った。
奈良からレンタカーを借りて50分 山中に分け入って 三重県境に近い所に月ヶ瀬という村がある。
そこで昔奈良晒を作っていたという。現在は週に1回皆さんが集まって保存活動をしている。
 保存会会長の猪岡さんにいろいろ話を聞いた後 皆さんの作業を拝見させていただいた。

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奈良市内より50分ほど山に分け入った所に伝承教室がある。

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週に一回皆さんが集まって 糸績みから製織まで おこなう。

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青苧 岩島産。年間5kg購入するという
水で洗った後、とぎ汁に漬け、その後水で洗い、陰干しその後こくはしで細くする

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こくはし 苧をこれでしごいて細くする
その後爪で裂いていく。

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苧績み名人の松本さん 大嘗祭の時の粗妙の指導をしたという。
松本さんの家では昔晒しもしていたという。
糸績みは 一本撚りつなぎ 宮古上布とおなじ方法である。

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苧桶 オゴケ これから「へそ車」にかけ 緯糸となる「へそ巻」を作る。
苧桶に立てたに糸を引っかけたぐってゆく

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こちらも 苧桶 柿渋を塗っている 奈良晒しは緯糸に撚りを掛けない。
生平である。

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へそ車 前にあるのは舌出し 水に漬けながらへそ巻きを作る。

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できたへそ巻き 濡れている

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経糸は 撚りを掛ける

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綛棒 これに経糸を巻いてゆく
1周 1.1m 60回まくと「ひとひびり」
これを10セット巻くと 1綛
20綛 660mで 1反(12m)分ができる
細かいものだと22綛必要

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ワク 木枠であるが 円形になっているのが珍しい。

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整経台 ワクは16個 16本整経である。
上の糸を掛けるところを「めはじき}という
整経台の上に載っている物はイコウ 千切に巻いた経糸をここに載せて 粗筬通し(アリオサ)をしたり
綜絖通し(もじり通し)、筬入れをする。
整経は65回 1040本で着尺の本数となる
ヘィール と発音するという
環状整経で2カ所綾をとる。

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さいめんとり
千巻(ちきり)に経糸を巻いた後 のり付けをする
これをさいめんとりという。研修生は紡績糸の麻をつかって糊付けの練習。
準会員になると自分の績んだ糸を糊付けするそうだ。
粗筬を通して 糸の毛羽を平してゆく
のりはふのり使用 油は入れないとのこと

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杼 ウラに車がついている

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横から緯糸を出す

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舟形になっている 竹の押さえがある

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綾棒 3本綾となっている左2本が通常の綾 右1本が2本あぜとなっている
糸が切れたとき 綾棒から糸が逃げないようにしているとのこと

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織機は吊り下げ框になっている。
綜絖は糸綜絖 「もじり」という

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胸木があってその上に布を通す。相楽木綿と違うところだ。
胸木が細いし、男巻の位置が高いので 昔はこの下を通したと考えるが如何だろう。
月ヶ瀬ではこの方法を採用している。

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女巻千切側 間先が高い位置にあって経糸を斜めにしている。
真ん中に重しを掛けて垂らしてある紐は 綾棒につながっている

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織機の全体像 糸のかかっていない織機
相楽木綿のちょんこ機に似ている。大和機ほど経糸の傾斜はきつくない
昔の図書を見ると奈良晒の織機はもう少し経糸の傾斜がきつく筬引きのある紐吊りの筬框であったようだ。

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踏み木は 踏み代を稼ぐため土間をほってある。相楽木綿も昔はそうであったという。
土間も三和土にはしていなく ここに水を撒いて湿気を出す。
草木布は湿気が命である。

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生平は緯糸に撚りを掛けないで平糸のまま織ってゆく。
が、へそ巻きにして 繭状の中から糸をだすので若干の撚りがかかる

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ゆっくりゆっくり織ってゆく

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織りはじめたところが濡れているところが見える

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70度 60度と経糸の密度を云うが、それは16本整経で70回 60回(1尺幅)のことを云う
60度で960本 70度で1120本の経糸が1尺に入る
松本さんが織った奈良晒し
 染めは京都にたのんだという。




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◆奈良晒

月ヶ瀬の見学を終えて やはり大事なのは 糸績みに尽きると思った。
この技術が後の布の製織を左右する。
 10数mなら私でもできるかもしれない だがこれを経糸 13200mを一定の太さ、強度に作り上げることは至難の業である。まさに神技である。(もっともわたしもおなじことをしなければならないが)
 心を鏡のように平坦にしなければできない。果たして現代人にできるか?

この技を伝承してゆく 月ヶ瀬奈良晒保存会に皆様に敬意を表したい。

 現在は生平のみの生産で その後の晒しをしていないとのこと
昔は藁灰で炊き、天日干しの繰り返し その後3月から4月の草の上で干したそうだ
このとき草の葉っぱからオゾンがでて 白くなったという
 昭和になってさらし粉がでてきて それになったとのこと。

春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山 持統天皇

奈良晒しのことを云っていたのかと思います

保存会の皆様 丁寧な対応ありがとうございました。お礼申し上げます。

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